ああ かみさま おねがいです。
どうか どうか わたしにおかあさんをください。
おかあさんのあいをください。
ほかにはなんにもいりません。
・・・だから。
だから おねがいします。
おねがいします かみさま。


愛して。愛して――




「・・・憎いのね?わたしが?」

「・・・殺してもいいよ」

「お兄さん!殺しなさいな。遠慮なんかはいらないわ。
ぐっさりぐっさり殺してよ、ほら、殺してよ。おにーさん!」

「わたし、平気なんだから!だって、愛されてるの。
神に愛される子供は、お母さんにも愛されるはず。
ぜったい平気なの。愛されてるの。だから!」

「わたし・・・わたし・・・・これからどうすればいいんでしょうか?」

「憎むくらいなら殺してください。一気に殺してください」

カイムは少女を見下ろした。さきほどまでの禍々しさはすでにそこにはなく。泣きながら許しを乞い、縋りつく、その様。
それはもう世界を破滅に導いた司教でなく、ただの幼い少女でしかなかった。

―――なんと哀れな。

カイムは思った。少女ではなく、世界のことだ。
このような子どもごときに。・・・・命を落とした者達がひたすら哀れだった。

カイムの心にはこの少女に対し憐憫の欠片も浮かびはしなかった。
この少女に抱くもの。それはただ純粋な、燃え上がるような怒りと憎しみだった。

「カイムはお主を一生許さないそうだ。やすやすと死ねると思ったら大間違いぞ」

声がでない彼の変わりに傍らのドラゴンが言う。

「カイムだけではない。この世界の何千もの魂がお前を許さない。
わかるか?おぬしは一生憎まれるのだ」

容赦のない言葉だった。それはまさしくカイムの言葉そのものだった。
少女の心にその言葉は深々と突き刺さり、どんどん奥へと入っていく。

「うふふふ・・いや、やあよ」

少女の口からこぼれ出る抗いの言葉には弱りきった心が漏らす笑みが含まれていた。
かまわず紡がれる責めの言葉。

「我が言ってやろう」

それはカイムの言葉だった。

「おぬしに、救いはあらぬ!」

少女は悲鳴をあげた。許してほしいと。
ひたすら求め続け、今までも何度も許しを乞い続けた相手に向かって。

彼女にはその存在がすべてだった。
その人に愛されるためなら、世界だっていらない。
なんにもいらない。


ああ

神様

どうして



おかあさん。

どうしてなの?